匍匐前進匍匐(ほふく)前進

★陸上自衛隊の前期教育隊でその基本を、普通科職種の後期教育隊で更に本格的に学ぶものに、匍匐前進(ほふくぜんしん)がある。
戦闘訓練には必ず付いてくる前進方法だ。
匍匐前進を習いたての頃は、酔った勢いで、これをよく街中でやる隊員もいる(笑)。
それでは、匍匐前進とはどのようなものであろうか!?
簡単に言うと、体勢を低くして前に進む動作のことである。
小銃や機関銃、それにロケットランチャーなど、所持する武器に拠り若干動作に違いがあるが、ここでは小銃を携行している場合について述べる。
地上戦(白兵戦)において、敵陣深く攻め寄せて行くと、当然に敵陣(塹壕やトーチカなど)からは弾丸が飛んでくる。
敵狙撃手の、狙いをすました正確な射撃の洗礼も浴びるだろう。
そうした状況において、体勢を高くしていると、敵兵からは格好の標的となる。
そこで、敵の弾丸に当たらないように体勢を低く保持しなければならない。
このように、体勢を低くしながら敵陣に向けて前進する方法を匍匐前進と呼ぶのである。
当然のことながら、敵陣に近づくにつれて、その体勢も更に低く保持しなければならない。
そこで、匍匐前進には通常、その前進姿勢から第一匍匐から第五匍匐(第四匍匐)と呼称されている。
第一匍匐とは、小銃を右手に持って右腰付近で保持し、左ひざを地面に付けて右足を後方に伸ばして、左腕で上体を支えながら前進する。
第二匍匐とは、第一匍匐の状態から左臀部を地面に付け、上体を支える左腕も肘が地面に付くくらいに下げて前進する。
第三匍匐とは、かなり体勢を低くした四つんばいであり、小銃は前進するに従って逐次前方に置く。
第四匍匐とは、伏せた状態から両肘を前に出し、右手で小銃の銃把を、左手で被筒を握り、肘を交互に支点にして前に出し、出した肘と反対側の足を前方に曲げ、その足及び膝で体を推進する。
よくオモチャで匍匐前進をする兵隊人形があるが、この第四匍匐である。
第五匍匐とは、伏せた状態から両腕を前に出すと同時に右(左)足を前方に出して曲げ、両肘を支点として、右(左)足を伸ばして前進する。
その際には、左手で地面の草等を掴(つか)んで体をひきつける。
尚、小銃は右手で前部負い紐部分を掴んで引きずって前方に置く。
この第四匍匐や第五匍匐では、頭や踵(かかと)などが上がらないように注意する。
後期教育隊での戦闘訓練の際には、この匍匐前進の時に、「頭が高い!」と、よく班長に頭や踵を蹴られたりしたものだ(ToT)
せっかく体勢を低くして匍匐前進しても、頭や踵が上がっていると、敵の弾丸の標的になるからだ。
匍匐前進の番外編として、尺取虫の匍匐というのもある。
これは、伏せの姿勢から、両足を合わせ、足はつま立てる。
小銃は銃口を左にして両手で下から保持する。
この状態で、両肘及び両つま先をもって体を持ち上げ、前方に推進するのだ。
以上が匍匐前進の要領であるが、この匍匐前進を伴う戦闘訓練の時には、銃剣を弾帯の右側に吊るす。
銃剣は、通常は弾帯の左側に吊るしているが、戦闘訓練においては立った状態から急に伏せたりするとき、または第一第二匍匐の時などに、体の左側から地面に着地することが多く、身体と銃剣の破損を防ぐ為に右側に吊るすのである。
尚、実際の戦闘においては第一匍匐から第五匍匐、それから突撃とスムーズには事が運ばない。
敵陣からの応射の激しさ等によっては、堆土の影や、その場で数時間もの間じっとしていなければならないこともあり、場合によっては携行している猿臂(えんぴ=シャベル)で、その場で敵の銃撃から自分の身を守るための穴などを掘ることもある。
いずれにせよ、数十メートルを匍匐前進で移動することは、かなりの体力を消耗することは間違いない。
「匍匐前進は、女に夜這(よば)いをかける時に応用できそうだ♪」
・・・某新入隊員のつぶやきであった(笑)

※参考資料:陸自教範/各個の戦闘訓練


有刺鉄線

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