「欲しがりません勝つまでは」

優秀な隊員優秀な隊員

★朝礼や終礼などには、いつも中隊長(第315共通教育中隊長、3等陸佐)が登場する。
この中隊長の口癖が、「いやぁ、君らは本当に優秀な隊員だっ!」というものだった。
「俺達って優秀な隊員なのかい!?」
いつも私たちは不思議な気持ちになったものである。
でもそれは、きっと私達新入隊員の自尊心をくすぐって手なずけようとする彼らの常套手段だろうと思ってた。
仮にも、回答付きの入隊試験で合格したもんに優秀な奴なんておるわけないじゃろというのが本音だ。
しかしながら、後々になって、中隊長の言葉の意味が何となく分かるようになってきた。
私達3月隊員と4月隊員は、いちおうは高校を卒業して入隊してきた。
だが、新入隊員の中には、それ以外の分けのわからない月に入隊してきた者もいる。
高校どころか、中学校もろくに卒業していない者とか、昨日まで街のごろつき同然であった者もいるのだ。
何と、漢字や文字(日本語)が書けない者までいる始末である。
そういう連中から見れば、私たちはいちおう読み書きはできるから優秀なんだろう。
当時の私は余りにも若く、学校をきちんと卒業して就職するのは当たり前のことだと思っていた。
社会の色々な階層の人々、色々な経験を積んできた人間に出会った最初の経験だった。


※文中に登場する個人名、団体名、組織名等は一部架空及び仮名であり実在のものと異なります。

有刺鉄線

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