敵は幾万

炊事兵炊事兵

★自衛隊での炊事場(食堂)勤務者で、専属として業を行っているのは、通常、駐屯地業務隊の陸曹(下士官)で、その他の作業員はその駐屯地内の各部隊から炊事当番作業員を交代で派遣する。
この炊事場勤務者をKP作業員という。
また、野外での演習などでは、各部隊ごとに野外炊事車等で隊員の食事を作ったり、炊事(管理)専門部隊から食事の支援を受ける。
もちろん、演習で状況に入ると(戦闘状態に入ること)、食事は缶飯などの携帯糧食に変わることもある。
各隊員には飯盒が支給されてはいるが、その飯盒で野外で火を起こして飯を炊いたりはしない。
あくまで、食器の代わりにその飯盒を使用する。
状況に入ると、その飯盒に飯を入れ、その上におかずを載せ、その上から味噌汁をかけるという(ぶっかけ飯)、一種のネコまんまが登場するが、これがけっこう美味しい。
私も一般部隊に配属されてからは、演習などでよく炊事班の支援に行かされたが、考えてみれば戦闘で荒野を駆け巡るよりは楽である。
通常2交代制ぐらいでやるので、昼間もゆっくり休めるときがあるし、何よりも役得で飯がたらふく食えるのだ。
しかしながら、駐屯地でのKP勤務は行きたくなかったし、実際にも行く機会はなかった。
「KP勤務はいやだ!飯炊きのために自衛隊に入ったのではない!」このように考える自衛官は少なくなかった。
KP勤務は重要な職務であり感謝はしているが、やはり直接間接にも、自衛隊の本義たる国防に結びつく仕事がしたかったからである。
私の在職時世話になった人の一人に、中井士長(陸士長=階級、当時)がいる。
彼は司令部勤務班として、第三師団司令部の1部(広報担当)で勤務していたが、やがて部の事情で原隊の管理小隊に復帰した。
そして復帰するや否や、KP作業員として駐屯地の食堂に派遣されたのである。
彼は、そのことに非常に憤りを感じていた。
彼の気持ちは理解できる。
昨日まで司令部勤務であったのに、何故、今日から炊事兵なのかということである。
その後、中井氏は努力して下士官となり、職種も警務科に変って警務隊に所属、優秀な警務隊員となった。


※文中に登場する個人名、団体名、組織名等は一部架空及び仮名であり実在のものと異なります。

有刺鉄線

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