SS-Kavallerie Lied

千僧自動車教習所千僧自動車教習所

★教育隊から第三師団司令部付隊に配属されてすぐに、私達新入隊員5名は、千僧駐屯地の自動車教習所へ入所することを命ぜられた。
約三ヶ月間の大型自動車免許取得教習課程である。
普通科職種の隊員としては、かなり早く免許を取らせてもらうことになり幸運であった。
教習所の先任陸曹は、鳥巣1等陸曹(階級・当時)で、主に学科を担当していた。
顎を使用せず、唇だけで話すような、独特のしゃべり方の人であった。
「トリスを飲んでハワイへ行こう!」が口癖だった。
教習所実技指導員は、各部隊から派遣された陸曹である。
私の配属された第七班の指導陸曹は、第3施設大隊から派遣されてき佐野2曹というおもしろいオッサンであった。
教習所及び路上コースは、伊丹駐屯地に近い久代射撃場の隣にあった。
毎朝、千僧駐屯地の自動車教習所隊舎前に集合して、そこから各トラックで久代の教習所に通うのだ。
当時の私の日記を紐解くと、「所内学科模擬試験にて結果96点、教官室で叱責並びに指導を受ける。」とある。
96点で叱責だから、陸上自衛隊の自動車教習所での教育がいかに厳しかったが分かる。
陸上自衛隊の自動車教習所には、二つの特色がある(当時)。
ひとつは、最初から大型免許を取得することだ。
私も自動二輪の免許は持っていたが、普通免許は持っていなかった。
しかしながら、自動車教習所では、最初からトラックを使用しての教練であった。
二つ目は、クラッチ操作である。
昔のトラックはギアー操作の際に、例えば一速から二速へ切り替える時に、一速からニュートラルに入れる時に一回、ニュートラルから二束へ入れる時に一回と、二回クラッチ操作をする。
いわゆるダブルクラッチといやつだ。
現在のトラックでは、通常の普通乗用車と同じくクラッチ操作は一回で良いのだが、自衛隊ではいちおうダブルクラッチをさせるのである。
さて、実技に関しては一般の自動車学校と同じく、自動車教習所内の検定試験にパスすれば良いのだが、筆記試験に関しては試験場に行って受験し合格しなければならない。
私達は明石の試験場で受験し、何とか大型免許を取得することができた。
厳しくもあり、楽しかった自動車教習所での訓練が終了し、終了式を迎えた。
所長をはじめ教官や助教、そして基幹隊員達の両腕で作るアーチを通り抜けて、教習所を後にした。
路上教習の際に、道端で手を振る少女に、教習中であるにも関わらず手を振って応え、佐野2曹にこっぴどく叱られたことも、今となっては懐かしい。
同期で同じ班となった補給隊の永野3曹や生岡・津野士長など、良い仲間もできた。
教育隊をはじめとする自衛隊の教育機関ほど、有意義な場所はないと思う。
ちなみに、当時、自衛隊では営内居住隊員、特に新入隊員の自動車購入や自家用車の運転は禁止されていた。
部隊によっては、免許証を取り上げて部隊で保管するようなところもあった。
したがって、私も部隊には内緒で、駐屯地の近くに駐車場を借りて自家用車を保有したものである。


※文中に登場する個人名、団体名、組織名等は一部架空及び仮名であり実在のものと異なります。

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