分裂行進曲

銃剣道銃剣道

★部隊では、年に一回銃剣道の合宿が行われた。
この銃剣道要員に選ばれると、恒常業務を離れて訓練に参加することになる。
銃剣道とは、旧軍時代には銃剣術とよばれていたもので、陸上自衛隊では持久走と並んで盛んに行われている競技だ。
普通科隊員(歩兵)が戦闘状態に突入すると、当初は小銃等で射撃を行うが、最終段階の突撃や近接した敵兵と戦闘する時には、小銃の先に銃剣を付けて敵兵を刺殺する。
そのために、剣道の面や胴、それに肩当をつけて木銃で訓練し、技を競い合うのだ。
銃剣道は、普通科(歩兵)連隊にて最も盛んに行われており、そのレベルも非常に高い。
したがって、競技会では、「連隊の部」と「大隊の部」、それに「隊の部」に分かれて試合が行われる。
司令部付隊は、隊の部に参加するのだ。
私は、この銃剣道が苦手であった。
理由は、私のド近眼にあった。
柔道では、相手の袖や襟に触れ合った状態から技を掛け合うことができる。
空手でも、ある程度の間合いに入った状態からでも対処できる。
ところが、銃剣道ではあっと思った瞬間、すなわち相手の細い木銃の先が自分の体に触れたとたん「一本!」となってしまうからだ。
銃剣道の合宿は厳しかったが、それはまた楽しいものでもあった。
銃剣道合宿要員には、毎日、「赤マムシドリンク」が支給されたことも懐かしい。
車両小隊に高橋3曹という人がいた。
在職時、とても世話になった人で、自宅に遊びに行ったこともある。
この人は、まさに銃剣道の達人でもあった。
「あっ!」どころか、知らないうちに木銃の先が懐に飛び込んでくる早さであった。
第36普通科連隊に転勤されたが、形見にもらった連隊章は今も大切に持っている。


銃剣
(64式7.62ミリ小銃の先に付けた銃剣)

※文中に登場する個人名、団体名、組織名等は一部架空及び仮名であり実在のものと異なります。

有刺鉄線

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